【ブナの森写真工房】 ≪本の紹介≫

『山の自然図鑑』の続編について

『山の自然図鑑』

写真と文 鈴木澄雄
随想舎
[定価] 本体2,000円+税
B5判・並製117P
2009年4月1日刊






・なんで山に登るのか?「そこに山があるから(Because it is there.)」とは エベレストの初登頂をめざしたイギリスの登山家・マロリーの言葉。山好きの人にとっても「なんでオレ、山に登っているんだろう。よく判らないや」

・人間にとって根源的な問いかけである「なんで山に登るのか」−−−山に登る理由は百人百様、日本百名山を目指す人、テント担いで白銀の山へ、沢登りや渓流釣り、山の花が好きな人も多いことでしょう。 野生動物の調査や山小屋で働いている人は、仕事で山へ、となるのかも知れません。山に登る理由はいろいろあるけれど、山の魅力ってなんでしょう?

・自然豊かな山に登ると、生き物の気配に包まれて、締め付けられるような気分になることがあります。生物多様性と言うけれど、草花から大型の動物まで、生命の数が多すぎて、 すっきりさわやか、とは対極にある、ちょっと恐ろしげな世界のように感じることもあります。

・ギョッとするほど大きな老木に巡り逢い、その根元には可憐な花が咲いている。トンボの大群に出会ったり、ノウサギやカモシカの姿を見ることもあります。白化や先祖帰りした花、木の実のような虫こぶ、キノコの色と姿の不思議。 山の自然は驚きと不思議に満ちた、心がドキドキ、ワクワクする世界のようです。

・日本の山の自然は、曖昧模糊とした訳のわからない世界。そんな自然との付き合いの歴史から得られた教えが、「お天道様が見ている、大木にも滝にも岩にも神宿る」。 自然を荒らせば人間が生存できなくなる、という前提に立ったルールで、訳のわからないものと付き合うための、合理的な考えのようです。いちいち判りやすい説明は出来ないけれど、やってはいけないことが 世の中にはたくさんあるのですから。

・今までの山岳写真の迫力ある山容の写真だけでは、山の自然の一断面しか捉えられません。自然の中に分け入って巡り逢った巨木、虫こぶ、花や葉、芽生えの形、アブ…気になったものは こまめに写して、多種多様な姿を組み立てていかなければならない、と思っています。そんなこんなで、この本には423点(不正確)の写真を掲載しています。

・山の迫力ある写真、美しい写真が発表され続け、自然を大切にと言われ続けていますが、その裏側で道路工事や採石場など乱開発が拡大し、本来の自然がなくなりつつあります。命が生き生きとした山の自然の 姿を残しておかなければ、日本の原風景への懐かしさも愛着も消え去ってしまいそうです。

・私たちのフィールドが失われ、人間の生活環境が徐々に悪くなっていく。経済発展の声勇ましく、大気汚染の影響で尾根の樹林は枯葉剤を浴びたように立ち枯れ、山は爆弾を投下されたように掘り返されています。

・写真は芸術よりも記録なり! 山の現状を写し発表する人がいないのならば、これからは山のルポルタージュに取り組んでいこう、と考えています。 『山の自然図鑑』はそのためのスタートラインになってくれる、と期待しています。


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